腸内フローラのことを引き続き調べています。

これまでに腸内フローラについてわかったことは
◯ 宿主の体質や健康状態に影響を及ぼす
◯ 生体恒常性の維持に重要な役割を担っている
ということです。

肥満性やダイエットに関することもさることながら
腸内フローラを研究することで
大腸がん、炎症性腸疾患、自己免疫疾患、代謝性疾患
といった様々な病態の新しい治療法の開発が
期待されています。

そうした流れの一例にあたると思いますが
腸内フローラ解析技術を軸に病気ゼロ社会を目指す
「腸内デザイン応援プロジェクト」
という取り組みもはじまっています。

慶應大学と東京工業大学のジョイントベンチャー
株式会社メタジェンが中心になって立ち上げたもので
食品会社や医薬品会社など17社が参加して
メタジェンの腸内フローラ解析データをもとに
健康維持・疾患予防技術の確立をはかっています。

現在、腸内フローラ研究はヘルスケアの分野で
ポテンシャルの大きな領域になっているようです。

こうした中、今年の3月には
これぞダイエットのための腸内細菌というべき研究が
京都の日東薬品株式会社から公表されました。
これは日東薬品と東京農工大学農学研究院の共同研究
として発表されています。

日本農芸化学会2017年度大会で発表された内容は
マウスを使った12週間の実験で
乳酸菌の一種ロイコ菌がつくる菌体外多糖(EPS)に
抗肥満効果を確認した

というものです。

詳細は日東薬品のウェブサイトに掲載されています。

乳酸菌「ロイコ菌」が作る多糖に
腸内細菌叢改善効果を確認
-3月18日の日本農芸化学会2017年度大会で発表-


EPSというのは菌がつくるネバネバ物質で
納豆やオクラなどのネバネバにも似ているそうです。

発表によれば、ロイコ菌EPSの摂取によって
◯ 腸内細菌の数が増えた
◯ ファーミキューテス門の細菌(デブ菌)が減り
  バクテロイデテス門の細菌(ヤセ菌)が増えた
◯ 腸内の短鎖脂肪酸が増えた
ということです。
短鎖脂肪酸が増えたことで抗肥満効果が発揮された
と研究チームは考えています。

これまでの研究で酢酸、酪酸、プロビオン酸といった
短鎖脂肪酸に肥満抑制効果があることや
こうした短鎖脂肪酸を多く産生する腸内細菌が
バクテロイデテス門であることは知られていました。

面白いことにロイコ菌が属する乳酸菌自体は
ファーミキューテス門の細菌なので
ロイコ菌はいわゆるデブ菌にあたるものなんですね。
デブ菌の代謝物がヤセ菌を育てる
という図式になっているわけです。
ダイエットには腸内細菌の多様性が重要ということを
多くの専門家が語っています。
こういう事例を知ると、なるほどと思います。

マウスの実験結果がヒトに適用できるかどうか
はこれからの研究になると思いますが
この結果はかなり期待できるのではないでしょうか。


日東薬品は創業70年を迎えた歴史のある会社ですが
自社の研究成果を特許にして、その特許の使用料で
稼いでいるというユニークな会社です。

ベンチャー企業のようなビジネスモデルですね。
ロイコ菌もロイエンドウマメという植物から
日東薬品が抽出した乳酸菌だそうです。

だから、ロイコ菌EPSが製品化されても
日東薬品という名前は出てこないかもしれません。
でも近い将来
ロイコ菌EPS配合のサプリや健康食品が発売されたら
それは日東薬品も一枚かんでいる仕事です。

どんなカタチで具体化するのか、今から楽しみです。